オーストラリアのワインに「暑い国の濃い赤」という印象を持っている人は、タスマニアのワインに驚くかもしれません。本土の南の涼しい島で造られる、酸のきれいなスパークリングやピノ・ノワールが注目されています。
このページでは、タスマニアのワインの特徴とスパークリングが有名な理由、主な品種、シャンパーニュとの違い、ラベルの見方、合う料理を、初心者向けにわかりやすく紹介します。
タスマニアのワインをひとことでいうと
・オーストラリア本土の南の島にある、国内でも特に涼しい産地です
・味わいは、きれいな酸とみずみずしい果実味。「暑い国のワイン」という印象とは正反対です
タスマニアはどんなところ?
オーストラリア本土の南、バス海峡を渡った先にある島がタスマニア州です。南緯41〜43度ほどに位置し、周りを海に囲まれています。ワインの生産量はオーストラリア全体のごく一部ですが、質の高さで注目を集めている産地です。
島の気候は涼しく、ブドウはゆっくりと時間をかけて熟します。そのため酸がしっかり残り、香りも繊細になります。冷涼な産地を好む品種にとって、オーストラリアの中では貴重な土地です。
ワイン造りの始まりは1820年代までさかのぼりますが、その後は長く途絶えました。1950年代にフランス出身のジャン・ミゲ、イタリア出身のクラウディオ・アルコルソがブドウ栽培を再開し、1970年代にはパイパーズ・ブルックが北部で畑を開きました。今の産地の姿は、こうした挑戦から始まっています。
なぜスパークリングで有名なのか
スパークリングワインには、酸のしっかりしたブドウが向いています。酸が味の骨格になり、長い熟成にも耐えられるからです。涼しいタスマニアのシャルドネとピノ・ノワールは、まさにこの条件に合っています。使う品種もシャンパーニュと共通です。
1980年代には、シャンパーニュの名門ルイ・ロデレールが現地と組んでスパークリング造りに関わりました。これがタスマニアの可能性を広く示すきっかけのひとつになりました。上質なものは、シャンパーニュと同じ瓶内二次発酵で造られています。
造り方の違いは、スパークリングワインの製法の記事でくわしく紹介しています。
タスマニアの主なブドウ品種
ピノ・ノワールとシャルドネが畑の中心で、スパークリングにもスティルワインにも使われます。
| 品種 | 動物に例えると | タスマニアでの味わいの傾向 |
|---|---|---|
| ピノ・ノワール | 蝶 | 赤い果実の香りと明るい酸。軽やかで繊細 |
| シャルドネ | ユニコーン | 柑橘の香りとシャープな酸。スパークリングの柱にもなる |
| ソーヴィニヨン・ブラン | 羊 | ハーブや青い柑橘の香りで、すっきり爽やか |
| ピノ・グリ | カメレオン | 果実味と酸のバランスがよい、やわらかい白 |
| リースリング | ペンギン | ライムのような香りと、きりっとした酸 |
動物に例えると、冷たい海風の中をひらひらと飛ぶ蝶です。管理人はピノ・ノワールが好きで、ハーブ感のあるソーヴィニヨン・ブランも好みなので、涼しい島のこの2つはいつか飲み比べてみたい組み合わせです。
ヤラ・ヴァレーやシャンパーニュとの違い
冷涼な産地として並べると、タスマニアの立ち位置がわかりやすくなります。
| 比べる点 | タスマニア | ヤラ・ヴァレー | シャンパーニュ |
|---|---|---|---|
| 場所 | オーストラリア本土の南の島 | ヴィクトリア州、メルボルンの近く | フランス北部 |
| 気候 | 海に囲まれ冷涼 | 本土の中では冷涼 | 大陸の影響を受ける冷涼な気候 |
| 主役 | スパークリング、ピノ・ノワール | ピノ・ノワール、シャルドネ | スパークリング(シャンパーニュ) |
| 味わい | きれいな酸とみずみずしい果実味 | 繊細でやわらかい | きめ細かい泡と熟成の香り |
なお、「シャンパーニュ」と名乗れるのはフランスのシャンパーニュ地方のものだけです。くわしくはシャンパンとスパークリングワインの違いをご覧ください。
島の中の主な地区
タスマニアは島全体でひとつの産地として表示されるのが基本ですが、北部・東海岸・南部で個性が分かれます。ラベルや造り手の紹介で、次の地名を見かけることがあります。
- タマー・ヴァレー、パイパーズ・リヴァー(北部):スパークリングの中心地。ピノ・ノワールやシャルドネも多い
- 東海岸:海沿いの畑が点在。比較的温暖で、ブドウがよく熟す
- コール・リヴァー・ヴァレー、ダーウェント・ヴァレー(南部):州都ホバートの近く。ピノ・ノワールの評価が高い
- ヒューオン・ヴァレー(南部):島の南の端に近い、特に涼しい地区
代表的な造り手
タスマニアの名前を広めてきた造り手を紹介します。
| 造り手 | 知っておきたいこと |
|---|---|
| ハウス・オブ・アラス(House of Arras) | 醸造家エド・カーが手がける、オーストラリアを代表するスパークリング |
| ジャンツ(Jansz) | 北部パイパーズ・リヴァーのスパークリング専門の造り手 |
| パイパーズ・ブルック(Pipers Brook) | 1970年代に北部で畑を開いた、現代のタスマニアの先駆け |
| ステファノ・ルビアナ(Stefano Lubiana) | 南部の家族経営の造り手。ビオディナミで栽培する |
| トルパドル(Tolpuddle Vineyard) | 南部コール・リヴァー・ヴァレーの畑。ピノ・ノワールとシャルドネが高く評価されている |
タスマニアのラベルの見方
スパークリングの表記を覚えておくと、選びやすくなります。ほかの国の泡と共通の言葉が多く使われています。
| ラベルの表記 | 意味 | 選び方 |
|---|---|---|
| Tasmania | 産地名 | まずはこの文字を探す |
| Méthode Traditionnelle | 瓶内二次発酵 | シャンパーニュと同じ造り方 |
| Brut | 辛口 | 迷ったらこれ。食事に合わせやすい |
| Blanc de Blancs | 白ブドウだけで造った泡 | シャルドネ主体で、すっきりした味わい |
| Vintage | 単一の年のブドウで造る | その年の個性を楽しむ上級品に多い |
タスマニアのワインに合う料理
酸がきれいなので、魚介や和食に寄り添います。タスマニアはサーモンや牡蠣の産地としても知られています。
| 料理 | 合うワイン | 合う理由 |
|---|---|---|
| 生牡蠣 | スパークリング(Brut) | 泡と酸が、牡蠣の磯の風味をすっきりさせる |
| サーモン | ピノ・ノワール、シャルドネ | 軽やかな味わいが脂に寄り添う |
| お刺身 | スパークリング、シャルドネ | 酸があるので、魚のうまみを邪魔しにくい |
| 天ぷら | スパークリング | 泡が油をさっぱりさせる |
| 鴨 | ピノ・ノワール | 赤い果実の酸が、鴨の脂と香りに合う |
| きのこ料理 | ピノ・ノワール | 土のような香りと、きのこの香りが重なる |
よくある質問
タスマニアもオーストラリアのワインなのですか?
はい。タスマニアはオーストラリアの州のひとつです。ただ、本土の暖かい産地の濃い赤とは味わいが大きく違うので、オーストラリアのワインの印象が変わるかもしれません。
シャンパンの代わりになりますか?
同じ品種と同じ造り方のものがあるので、お祝いの席の選択肢になります。ただ、シャンパーニュの代わりというより、産地の個性を楽しむ1本として選ぶのがおすすめです。
日本でも買えますか?
輸入されている銘柄はありますが、本土の産地に比べると見かける機会は多くありません。ワイン専門店やオンラインのショップで探すと見つけやすいです。
初心者がはじめの1本を選ぶなら?
まずは辛口のスパークリング(Brut)がおすすめです。この産地の魅力であるきれいな酸がわかりやすく、食事にも合わせやすいです。赤を試すなら、軽やかなピノ・ノワールを選んでみてください。




