オーストリアの白ワインを調べていると、必ず名前が出てくるのがヴァッハウです。ドナウ川沿いの世界遺産の景色の中で、引き締まった辛口の白が造られています。
このページでは、ヴァッハウのワインの特徴と主な品種、ラベルに書かれる3つの区分の違い、代表的な村、合う料理を、初心者向けにわかりやすく紹介します。
ヴァッハウのワインをひとことでいうと
・ドナウ川沿いの段々畑で育つ、グリューナー・ヴェルトリーナーとリースリングの名産地です
・ほとんどが辛口の白。軽やかなものからコクのあるものまで、同じ産地でも幅があります
・「シュタインフェーダー」「フェーダーシュピール」「スマラクト」の3区分が、味わいの濃さを選ぶ目安になります
ヴァッハウはどんなところ?
ヴァッハウは、オーストリアの北東部、ニーダーエスターライヒ州にある小さなワイン産地です。ウィーンから西へ向かったドナウ川沿い、メルクとクレムスの町のあいだに畑が続いています。
川の両側に迫る急な斜面には、石垣で支えられた段々畑が並びます。修道院の町や城跡、ブドウ畑が一体となった景観は、「ヴァッハウ渓谷の文化的景観」としてユネスコの世界遺産に登録されています。
この土地の特徴は、東からの暖かい空気と、北西の森から流れ込む冷たい空気がぶつかることです。昼と夜の気温差が大きいため、ブドウは酸を保ったままゆっくり熟します。辛口なのに香りが豊かで、きりっとした酸もあるのは、この気候のおかげです。
斜面の上のほうは岩がちの土、ふもとや川沿いには黄土(レス)が多く見られます。春にはアンズの花が咲くことでも知られ、アンズはワインと並ぶこの土地の名産です。
ヴァッハウの主なブドウ品種
ヴァッハウの畑はほとんどが白ブドウです。この2品種を覚えれば、棚に並ぶワインの大半がわかります。
| 品種 | 動物に例えると | 味わいの傾向 |
|---|---|---|
| グリューナー・ヴェルトリーナー | コヨーテ | 青リンゴや柑橘の香りに、白コショウのようなスパイス感。ヴァッハウでは特に引き締まった辛口に |
| リースリング | ペンギン | 桃やアンズの香りと、まっすぐな酸。ドイツのものより辛口がはっきりしている |
動物に例えると、身軽なコヨーテが斜面を駆け回り、芯の強いペンギンが岩の上にすっくと立っているイメージです。岩がちな高い畑はリースリング、黄土の多い畑はグリューナー・ヴェルトリーナーと、土地に合わせて植え分けられることもよくあります。
シュタインフェーダー・フェーダーシュピール・スマラクトの違い
ヴァッハウならではの言葉が、この3つです。生産者団体「ヴィネア・ヴァッハウ」が決めた区分で、アルコール度数によって軽いものから順に分かれています。どれも辛口です。
| 区分 | アルコール度数 | 味わい | こんなときに |
|---|---|---|---|
| シュタインフェーダー(Steinfeder) | 11.5%まで | 軽やかでさわやか | 昼の食事や、乾杯に |
| フェーダーシュピール(Federspiel) | 11.5〜12.5% | 香りと軽やかさのバランスがよい | 魚や鶏肉の普段の食事に |
| スマラクト(Smaragd) | 12.5%以上 | コクがあり力強い | 豚肉のローストや、特別な日に |
シュタインフェーダーは畑のまわりに生える草の名前、スマラクトはブドウ畑にすむエメラルド色のトカゲの名前に由来します。はじめての1本なら、産地の個性とバランスがわかりやすいフェーダーシュピールがおすすめです。
この区分は団体の会員が使うものなので、すべてのヴァッハウのワインに書かれているわけではありません。書かれていないときは、ラベルのアルコール度数を見れば、同じように軽さ・重さの見当がつきます。
代表的な村と畑
ラベルに書かれていることの多い村を紹介します。川の流れに沿って、西から東へ並べました。
| 村 | 特徴 |
|---|---|
| シュピッツ(Spitz) | ヴァッハウの西側の村。涼しさを感じる、すっきりした味わいが持ち味 |
| ヴァイセンキルヒェン(Weißenkirchen) | アハライテン(Achleiten)などの名高い畑がある、中心的な村 |
| デュルンシュタイン(Dürnstein) | 青い塔の修道院と城跡で知られる観光地。リチャード獅子心王が囚われた城の伝説でも有名 |
| ロイベン(Loiben) | 東の端。暖かく、力強い味わいのワインが生まれやすい |
| マウテルン(Mautern) | ドナウ川の南岸にある村。北岸の村々の対岸に畑が広がる |
畑の名前の前には「Ried(リート)」と書かれていることがあります。これは「単一の畑」という意味で、畑ごとの違いを楽しむ1本の目印です。
カンプタール・クレムスタールとの違い
ヴァッハウと同じ品種で知られるのが、東どなりのクレムスタールと、その北東のカンプタールです。
| 比べる点 | ヴァッハウ | カンプタール・クレムスタール |
|---|---|---|
| 畑の場所 | ドナウ川沿いの急な段々畑 | ドナウ川やその支流の周辺。なだらかな畑も多い |
| 主な品種 | グリューナー・ヴェルトリーナー、リースリング | グリューナー・ヴェルトリーナー、リースリング |
| ラベルの目印 | Wachau。3区分が書かれていることも | Kamptal、Kremstal |
| 価格の印象 | 生産量が少なく、やや高めになりやすい | 比較的手に取りやすいものもある |
同じ品種を飲み比べるなら、まずカンプタールやクレムスタールで香りをつかみ、次にヴァッハウのフェーダーシュピールへ進むと、段々畑の引き締まった味わいの違いが感じやすくなります。
ヴァッハウのラベルの見方
オーストリア全体の言葉は、オーストリアのワインの早見表にまとめています。ここでは、ヴァッハウのラベルで特に役立つ言葉を紹介します。
| ラベルの表記 | 意味 | 選び方 |
|---|---|---|
| Wachau | 産地名 | まずはこの文字を探す |
| Wachau DAC | ヴァッハウの原産地呼称 | 産地の基準を満たしたワインの印 |
| Grüner Veltliner | グリューナー・ヴェルトリーナー | スパイス感のある白 |
| Riesling | リースリング | 酸のきれいな白 |
| Federspiel など | ヴィネア・ヴァッハウの区分 | 軽さ・重さの目安に |
| Ried | 単一の畑 | 後ろに畑の名前が続く |
ヴァッハウのワインに合う料理
辛口で酸がきれいなので、油を使った料理や和食とよく合います。軽い区分は魚、スマラクトは肉と考えると選びやすくなります。
| 料理 | 合うワイン | 合う理由 |
|---|---|---|
| 天ぷら | シュタインフェーダー、フェーダーシュピール | 軽やかな酸が衣の油を切り、素材の味を邪魔しない |
| 白身魚の刺身 | グリューナー・ヴェルトリーナーの軽いタイプ | すっきりした味わいが、繊細なうまみに寄り添う |
| ウィーン風カツレツ | グリューナー・ヴェルトリーナーのフェーダーシュピール | 地元の定番の組み合わせ。酸とスパイス感が衣の油をさっぱりさせる |
| ローストチキン | リースリングのフェーダーシュピール | 酸味が皮の脂を引き締める |
| 豚肉のロースト | スマラクト | コクのある白が、豚肉の甘みとつり合う |
| サーモンのバターソテー | リースリングのスマラクト | 果実味と力強さが、バターのコクに負けない |
よくある質問
ヴァッハウのワインは辛口ですか?
ほとんどが辛口です。シュタインフェーダー・フェーダーシュピール・スマラクトの3区分も、すべて辛口のワインの区分です。甘さの見分け方は辛口ワインとはも参考にしてください。
初心者がはじめの1本を選ぶなら?
グリューナー・ヴェルトリーナーのフェーダーシュピールがおすすめです。ヴァッハウらしい酸とスパイス感がわかりやすく、料理にも合わせやすい1本です。
スマラクトは高いほうがおいしいのですか?
スマラクトはコクが強いタイプという意味で、上下を示すものではありません。軽い白が好きな人には、シュタインフェーダーやフェーダーシュピールのほうが合うこともあります。
ヴァッハウに赤ワインはありますか?
赤はごく少量です。オーストリアの赤を飲みたいときは、東部のブルゲンラントを探してみてください。
どのくらい冷やして飲めばいいですか?
軽い区分は冷蔵庫でしっかり冷やし、スマラクトは飲む少し前に出して温度を少し上げると、香りがよく開きます。温度の考え方はワインの適温もどうぞ。




